AGAの薬を調べれば、必ず目にするのが「フィナステリド」です。
ただクリニックなどでは、ほかの薬と併用されることも多いだけに「フィナステリドそのものの効果」が気になっていませんか?
できれば飲む薬は少ないほうが良いし、薬代も安く済ませたいものですよね。
そこでここでは、
- AGAクリニックへの実地調査
- 薄毛治療に関する論文調査
※日本皮膚科学会ガイドライン2017年版など
をもとに、ほかの治療薬と比較しながら、フィナステリドの効果や費用をご紹介します。
この記事を読めば、AGA治療薬の選び方が分かり、不安なく薄毛対策を始めることができますよ。
なおこの記事では、医学的知識に関して専門家に監修をしていただいています。
※クリニックや商品掲載部分を除く
伊藤 幹彦(いとう みきひこ)
東京医科大学八王子医療センター心臓血管外科や東京警察病院外科医長などを経歴し、 現在は伊藤メディカルクリニックの院長を務める。
これまでの術者としての経験をもとに、全身管理の大切さをモットーとし、健康維持への貢献を目指している。
◆伊藤メディカルクリニック公式サイトはこちら
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※この記事は、2024年6月時点での情報を参考にしています。
※価格はすべて税込です。
1.フィナステリドの効果とは
フィナステリドは、AGAの代表的な治療薬「プロペシア」に含まれる成分です。
クリニックではほかの薬と併用することが多いため、「フィナステリドだけでは効果がないの?」と疑問に思うかもしれません。
そこでこの章では、日本皮膚科学会ガイドライン2017年版を踏まえ、フィナステリドが薄毛に効くメカニズムと、実際の改善効果をご紹介します。
1-1.薄毛の原因とフィナステリドの働き
フィナステリドには、薄毛の原因となる「脱毛ホルモン」を抑制して、抜け毛を防ぐ働きがあります。
男性の薄毛で最も多いAGA(男性型脱毛症)の原因が、この脱毛ホルモンです。
脱毛ホルモンの生成には、男性ホルモンの「テストステロン」が関係しています。
テストステロンは通常、男性らしい体づくりや健康のために、なくてはならないものです。
しかし体内に存在する「5-αリダクターゼ」という還元酵素と結びつくと、抜け毛を促す「脱毛ホルモン(ジヒドロテストステロン;DHT)」に変わってしまいます。
この脱毛ホルモンを生み出す「テストステロン」と「5-αリダクターゼ」の結合をブロックするのが、フィナステリドです。
両者の結合を妨げることで、抜け毛を促すDHT(脱毛ホルモン)の生成を抑え、薄毛の進行を防ぐことができるのです。
1-2.フィナステリドは薄毛にどれくらい効果がある?
脱毛ホルモンを抑制するフィナステリドには、どれくらいの薄毛改善効果があるのでしょう。
目安として、日本皮膚科学会で公表されている調査結果をご紹介します。
⇒現状維持より高い改善効果を得た「58%」
内服2年
⇒現状維持より高い改善効果を得た「68%」
内服3年
⇒現状維持より高い改善効果を得た「78%」
出典:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」.
ここで言う「現状維持より高い改善効果」とは、程度の差はあれ毛が増えたことを示します。
つまりフィナステリドには、「透けていた地肌が目立たなくなる」くらいの増毛効果があるのです。
また内服治療の継続年数が長くなるほど、その改善効果は高くなることが分かります。
ただし、抜け毛を防ぐことで、
①何もしなければ抜けてしまうはずの毛が減る
②抜けずに済んだ毛が成長する
③結果、毛の量が増える
ちなみにフィナステリドの効果が現れるのは、平均して6カ月以上服用した頃です。
先ほどもご紹介したように、継続することで改善効果が高くなります。フィナステリドはある程度、長期的な服用が必要だと覚えておいてくださいね。
2.フィナステリドの2つの弱点
2005年に登場して以来、最も代表的なAGA治療薬として使われてきたフィナステリドですが、実は2つだけ弱点があります。
この章ではその2つの弱点と、それらをカバーする対策まで解説します。
①発毛を促すことはできない
繰り返しますが、フィナステリドの主作用は脱毛を防ぐことです。そのためフィナステリドには直接、毛を生やす作用はありません。
一方、発毛効果があるのが「ミノキシジル」という成分です。ミノキシジルは、血行を促すことで毛根に届く栄養を増やし、毛の生成を促します。
▶フィナステリドは薄毛の進行を抑える「守りの成分」
▶ミノキシジルは毛の生成や成長を促進する「攻めの成分」
先ほどお伝えしたように、フィナステリド単体でも抜け毛を防ぐことで相対的に増毛することは可能ですが、増毛効果が出るまでに時間を要します。
特に「早く効果を出したい人」「発毛させたい箇所がある人」は、フィナステリドとミノキシジルの併用が効果的です。
②効かない人もいる
フィナステリドのもう一つの弱点は、効果が出ない人がいること。その原因は、フィナステリドが一部の還元酵素にしか働かないためです。
実は還元酵素は2種類あり、種類によって存在する場所が異なります。
Ⅰ型の還元酵素:側頭部や後頭部
Ⅱ型の還元酵素:前頭部や頭頂部
フィナステリドは前頭部や頭頂部に多く存在するⅡ型にしか働かないため、人によっては効果が出ないケースがあります。
その対策として、Ⅰ型とⅡ型のどちらにも働く「デュタステリド」という成分が、2015年に登場しました。
「フィナステリドで効果が出なかった人」だけでなく「後頭部や側頭部が薄毛の人」は、デュタステリドの内服が効果的です。
3.フィナステリド配合薬の種類と価格
フィナステリドが入った内服薬は、意外とたくさんの種類があります。
有効成分であるフィナステリド配合であることはどの薬も同じなので、脱毛抑制という効果に違いはありません。
ただし価格や購入できる場所などが異なるため、ここでは全種類の情報をまとめてご紹介します。
先発薬品(新薬)
⇒有効成分を最初に開発した会社の商品
⇒販売から10~15年は、後発品の製造は禁止される
⇒開発費がかからない分、先発薬に比べて価格が安い
AGA治療薬をはじめ、ED治療薬など国内で自由診療扱いになるものは、安価な海外品の需要が高く、上記それぞれの海外製品を利用する人が多いのが事実です。
・国産のフィナステリド配合薬
国内で製造販売されているフィナステリド配合薬は、2005年から販売されている先発薬の「プロペシア」のほかに、8つのジェネリック医薬品があります。
いずれも買える場所は、
- 病院の院内処方
- 薬局(医師の処方せんが必須)
で、個人で購入することはできません。では、国産のフィナステリド配合薬をご紹介します。
商品名 | 製造販売元 | 処方量 |
先発薬 価格帯:6,000~10,000円 | ||
プロペシア | オルガノン | 0.2mg/1mg |
ジェネリック医薬品 価格帯:4,300~6,000円 | ||
フィナステリド錠「FCI」 | 富士化学工業 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「SN」 | シオノケミカル | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「クラシエ」 | クラシエ薬品 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「サワイ」 | 沢井製薬 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「トーワ」 | 東和薬品 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「ファイザー」 | ファイザー | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「武田テバ」 | 武田テバファーマ | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「TCK」 | 辰巳化学 | 0.2mg/1mg |
一般的には1mg錠が処方されますが、持病があるなど副作用の心配がある場合に、0.2mg錠が処方されます。
・海外産のフィナステリド配合薬
フィナステリドはもともと、アメリカの製薬メーカー「メルク社」が開発した成分。
これら海外の先発薬や海外版ジェネリックは、輸入サイトで購入することが可能です。
ただし、
- 偽造品が届く
- 思わぬ副作用が出る
といったリスクがあり、それらがすべて自己責任となってしまうため、特に初めてフィナステリドを飲む方にはおすすめできません。
商品名 | 製造販売元 | 処方量 |
海外版プロペシア 価格帯:4,200~8,200円 | ||
プロペシアアメリカ版 | MSD | 1mg |
プロペシアオーストラリア版 | MSD | 1mg |
プロペシアニュージーランド版 | MSD | 1mg |
プロペシアヨーロッパ版 | MSD | 1mg |
海外版ジェネリック 価格帯:1,500~4,900円 | ||
フィンペシア | シプラ社(インド) | 1mg |
エフペシア | シプラ社(インド) | 1mg |
フィナロ | インタス社(インド) | 1mg |
フィナバルド | イーストウエストファーマ社(インド) | 1mg |
フィナックス | ドクターレッディーズラボラトリーズ社(インド) | 1mg |
フィナロイド | ロイドラボラトリーズ社(フィリピン) | 1mg |
ハリフィン | ティーオーケミカルズ社(タイ) | 1mg |
フィライド | サイアムファーマケミカル社(タイ) | 1mg/5mg |
プロスカー | メルク社(アメリカ) | 5mg |
フィンカー | シプラ社(インド) | 5mg |
4.フィナステリドで注意したい副作用とは
フィナステリドの副作用は他のAGA治療薬に比べて発現率が非常に低く、いずれの症状も1%以下です。
一般的な風邪薬でも副作用は3%ほど起こり得るため、フィナステリドは比較的、安全な薬だと考えてください。
ここでは、起こり得る副作用の症状と発現率、注意点を解説します。
男性機能障害・・・0.7~1.1%
⇒性欲の減退
⇒勃起機能不全、射精障害、精液量減少
注意が必要な人:ストレスや疲れが溜まっている、悩みやすいor落ち込みやすい※精神的な不安は男性機能に影響しやすいため
肝機能障害・・・0.2%
⇒肝炎リスクを示す血液検査値(AST、ALT)の上昇
⇒倦怠感や食欲不振など
注意が必要な人:習慣的に飲酒する、肥満、肝臓に持病がある
こうした副作用は、体質や既往歴(これまでかかった病気の種類)などで起こりやすさが変わります。
そのため、そうしたリスクも含めて診察してもらえる、医師のもとで服用するのが安全です。
なお、妊婦と妊娠の可能性がある女性は服用できません。ホルモンに作用するため、特に男児の場合は生殖器奇形などのおそれがあります。
成分は皮膚からも吸収されてしまうため、女性は触れることも禁止されています。
5.まとめ
いかがでしたか?フィナステリドの薄毛への効果は理解できたでしょうか。
もう一度、フィナステリドについて要点をまとめます。
・程度の差はあれ毛を増やすことができる
・増毛効果は内服1年で58%、3年で78%
①早く効果を出したい人は「ミノキシジルとの併用」がおすすめ
②側頭部や後頭部の薄毛には同作用の「デュタステリド」が効く
・国産品は4,300~10,000円
・海外品は1,500~8,200円
フィナステリドをはじめ、AGA治療薬は複数の種類があります。
この記事でご紹介したそれぞれの違いを理解したうえで、より効果的な薄毛対策を始めてくださいね。
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